♦ ひらめき☆ときめきサイエンス 開催のお知らせ

  微生物に秘められた驚くべき力

     日時:2018年11月17日(土)9:00〜16:30
    場所:宮崎大学農学部(宮崎市学園木花台西1−1)
    対象:高校生
    申込方法:次のURLを参照して、お申し込み下さい。
    https://www.jsps.go.jp/hirameki/06_sanka.html

    特異状態微生物学とは何か


日本山岳会宮崎支部にて講演 (2018年4月14日)

「双石山湧水中から発見された珍しい紫色細菌」

 双石山九平登山口は、山岳地下水が集まり湧水となってわき出る場所があり、水文学的にも興味深い。塞き止め水場が設けられ、手軽に山岳水を取水できることで地元民に親しまれている。
 本研究室では山岳湧水中の細菌数の変動と地震動との関連性を調べ、地震予知の可能性を探っていた。水道法による細菌数測定では、双石山湧水はまったく清浄であり飲料に適しているといえる。しかし栄養源濃度を薄めた貧栄養培地を用い、培養時間を長くすると、水道法による測定をはるかに超える細菌数を測定できることがわかった。湧水中には有機物がほとんどないので、貧栄養性細菌が多く検出されることには整合性がある。
 貧栄養培地を用いて双石山湧水中の細菌数をモニターする中で、美しい紫色のコロニーを形成する細菌が偶然発見された。この紫色細菌の色素とはいったいなにか、産業利用はできないのか、どのような条件で作られるのか、ひいては紫色細菌は山岳生態学的にどのような役割をなしているのか考えてみたい。

 


 ♦ 清 啓自(きよし けいじ)助教 本学部へ赴任いたしました。発酵の専門家です。今後の活躍が期待されます。(2017年4月3日)

 

 


特異状態微生物学(Surrealistic Microbiology)の捉え方とその提唱

  地球上には高温、低温、高圧、高アルカリ性、高塩、乾燥地帯など生命の生息には過酷である環境がいくつも見受けられる。かつてそのような環境に は生命活動はないと思われていたが、微生物学者たちは、そこに生命の存在を証明し、その生態や生理学的性質を明らかにしてきた。このような研究領域は極限環境微生物学と呼ばれるようになった。極限環境は地球という惑星が内包する自然環境の一部であるという前提の元にあるので、歴とした自然との対話の一対象物であるといえよう。

 演者は極限環境微生物学の対象と手法を貫徹する中で、従来とは異なる視点によって立案された探求があることに気づくようになった。我々は、さまざまな物理装置の発明、進歩のおかげで、地球上にはありえない環境あるいは疑似地球外環境をたやすく作り出すことができる。またそのような環境は、汎用実験装置のわずかな工夫でも可能であるし、実験室内で極限環境の条件設定の幅を広げるだけでも、未知環境は整う。このような地球上にありえない状態、あるいは 疑似地球外環境を「特異状態」であると呼び、特異状態における微生物や物質の相互作用に意識を置く研究領域を特異状態微生物学(Surrealistic Microbiology)と呼ぶことを提唱する。

 特異状態微生物学の底流にはシュルレアリスム(超現実主義)があることを強調したい。シュルレアリスムは自動記述を根幹に置く芸術の表現形態で、 シュルレアリストたちは、規制や先入観からできるだけ離れることにより思考の書取りは可能か繰り返し実験している。シュルレアリストたちが、痙攣する美 (つきつめた現実)を「第二の現実」と呼んだのと同じように、地球上にあり得ない環境は「第二の自然」と呼ぶことができるのである。またシュルレアリスト たちが痙攣する美を発見したのと同様に、特異状態微生物学はセレンディピティを誘発する一つの有力な手段なのであり、そこにはいかなる規制、統制も受けることのない真の開放と自由が存在する。

 本講演では特異状態微生物学の思想と実践から導かれた、物理現象すなわち細菌細胞と微細針状物質を衝突させるヨシダ効果と、天然には見いだせないストロンチアナイト鉱物リエイトの結晶成長現象を紹介する。(演者が)自然界における意義への帰納もめざしたいと願うならば、それは特異状態微生物学の真価が発揮される時で、フランシス・ベーコン以来の近代科学の手法では導きだせない仮説の構築につながるだろう。このことは、生命はどのようにして現れ、なぜ、なんのために存在しているのか人類の意識をつきつめる営みそのものでもある。               (2015年12月 新潟工科大学にて講演)

 


第22回日本生物工学会九州支部宮崎大会 開催のお知らせ

 日時:平成27年12月5日(土)10:00〜19:00                                        場所:宮崎大学農学部講義棟(889-2192宮崎市学園木花台西1−1)                        参加費:一般2,000円,学生1,000円                                       ミキサー:17:30~19:00 宮崎大学生協食堂(参加費無料)

  申込み締切日 平成27年10月2日(金)必着   

  申込み先:宮崎大学農学部応用生物科学科 日本生物工学会九州支部宮崎大会実行委員会                   担当:吉田ナオト E-mail: a04109uATcc.miyazaki-u.ac.jp (AT=@)                          受信後,確認のメールをお送りします.また,講演要旨集執筆要領をお送りします.

  講演要旨締切日 平成27年11月6日(金)必着

 

 

 


生物工学会誌第93巻第4号(2015年)に「特異状態微生物学の捉え方とその提唱」を特集します

 物質の精製法や合成法が発達し、自然界に存在しない元素や化合物あるいはそれらが存在する状態を研究者たちは作ることができる。またさまざまな物質の運動を生み出し、かつ制御することのできる物理装置の技術が発展してきたおかげで、自然界にありえないかまたは見受けられにくい疑似地球外環境を作り出すことができるようになった。このような自然環境から類推される想定をはるかに超えるような環境、すなわち「地球上にあり得ない特異状態や想定を超える条件」下に物質や微生物を暴露させたとき、どのような物質間相互作用や原理原則が存在するのかといったことを明らかにする研究領域(特異状態微生物学 Surrealistic Microbiology)を提唱するとともに、これまでの研究成果や今後の展望を特集。

発行日:2015年4月25日

執筆者は次のとおりです。

   特集によせて  吉田ナオト・茂野俊也 (宮崎大学・つくば環境微生物研究所)

  ・巨大重力下での微生物の挙動  出口 茂 (海洋研究開発機構)

  ・クマムシの乾眠と極限環境耐性   堀川大樹 (慶應義塾大学SFC研究所)

  ・厳しい環境で生き残った細胞にみられる遺伝子発現  間世田英明・市瀬裕樹・上手麻希 (徳島大学)

  ・深部地下油層環境のメタン生成  眞弓大介 (産業技術総合研究所)

  ・酵母の高圧環境における振る舞いと酵素化学反応  重松 亨 (新潟薬科大学)

  ・ハイドロゲルの摩擦場における細菌と微細針状物質間の物理現象  吉田ナオト (宮崎大学)

 

 


♦日本生物工学会九州支部主催 2014年度市民フォーラム開催のお知らせ♦

「ファンタスティックな微生物たち〜細菌の生体鉱物化現象とものつくり〜」

日 時 2014年11月1日(土)13:00~16:00

会 場 宮崎市 宮日会館11階ホール(〒880-8570 宮崎県宮崎市高千穂通1-1-33)

プログラム

13:00~13:10 生物工学会九州支部長の挨拶

13:10~13:30 オーガナイザーによるシンポジウムの趣旨説明
13:30~14:10 鉄酸化細菌がつくりだすユニークな酸化鉄とその利用                       (岡山大学大学院自然科学研究科)鈴木智子
14:10~14:50 微生物機能を利用した金属ナノ粒子合成への試み ~セレン化カドミウムを例として~        (大阪大学大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻)惣田 訓
14:50~15:00 休憩
15:00~15:40 地層をつくる微生物 ~好熱性細菌の生物鉱化現象を探る~         
       (九州大学大学院農学研究院 生命機能科学部門 システム生物工学講座)土居克実
15:40~16:00 総合討論のち
        閉会の挨拶 ~未来の生物工学者に向けて~

参加費 無料

問合せ先 〒889-2192 宮崎市学園木花台西1-1 宮崎大学農学部応用生物科学科 吉田ナオト
E-mail: a04109uATcc.miyazaki-u.ac.jp  (AT=@)

 


科学とシュルレアリスム

 我が国は、今や目をそむけたくなるような科学技術の敗北に直面しているが、これにひるむことなく人類は進歩を続けなければならない宿命にある。か つてヨーロッパにおいて、戦渦の残骸の中から、ダダからシュルレアリスム(超現実主義)につながる思潮が形成された。文明や科学技術への不信感は、放心や 虚無ではなくすべてを否定するとういう肯定からとらえようとする姿勢に変化したのである。シュルレアリスムは自動記述を創造の根幹に置く芸術の表現手段へ と進展し、いかなる既成概念や統制から離れた思考を追求してきた。芸術と科学は一方は情緒的、一方は論理的で相容れぬ関係にあるが、科学がシュルレアリス ムに接近遭遇するとどのような思考になるのか、どのような技術を創成できるのか考えてみたい。

 次いで科学のシュルレアリスムへの傾倒と解釈している一大実験を押し進めることによって発見された新原理について説明する。すなわち微細針状材料と細菌 細胞から成るコロイド溶液をハイドロゲル表面の摩擦場に置くと、微細針状材料はいがぐり状凝集体を形成し、さらに滑り摩擦が駆動力となって、いがぐり状凝 集体は成長しながら細菌を穿刺し、穿刺中間体が形成される。この穿刺中間体が形成される現象が「ヨシダ効果」である。

 穿刺中間体には外来の遺伝子の取込みやすさが明らかとなり、またアスベスト類はヨシダ効果を発生させる物質であることが見いだされたことより、ヨシダ効果から従来法とは技術思想を異にする、微生物への遺伝子導入技術とアスベスト検知技術が演繹された。

 ヨシダ効果の自然界における意義を考えることは帰納的解釈へと敷衍し、科学のシュルレアリスムへの傾倒の成果が試されるときでもある。これまでの有力な仮説の一つはヨシダ効果は地震発生時に起こるということにある。たとえば受容細胞であるPseudomonas sp.と供与プラスミドとクリソタイルを含むコロイド溶液を、バイオフィルムを模したジェランの表面に広げた。 ジェラン表面に蛇紋岩プレートを接触させ、地震を想定した横揺れ振動(50〜130ガル)を与えた。その結果、受容細胞は供与プラスミドを取込んで抗生物質耐性に形質転換することが確かめられたのである。「地震摩擦進化説」の真理探求には今後より多面的な実証実験を必要とするだろう。科学がシュルレアリスムに接近することはセレンディピティーに遭遇するための手段、そして新しいパラダイムを構築する手段であるという胎動を予感する。(2013年3月 鹿児島大学にて講演)

 

 


NewScientistが仮説を紹介

地震は生命進化を進めた?

 生命の進化機構はC.ダーウィンが提唱した自然淘汰説が最も支持されており、現在は突然変異や遺伝子伝播など遺伝子変化の蓄積によって進化が起こると考えられている。                                             遺伝子の伝播は親から子へ伝わる垂直伝播と細菌同士が行うような同種間、近種間で遺伝子を受け渡す水平伝播がある。このたび蛇紋岩層では地震動が遺伝子の水平伝播を促進し、細菌進化の原動力になったという証拠が見つかった。蛇紋岩層ではクリソタイルと呼ばれる微細な針状鉱物が形成される。また細菌は自然界ではバイオフィルムというゲル状の物質に包まれていることが多い。                                             研究グループはゲル上に細菌細胞と遺伝子、クリソタイルを置き、150ガルの横揺震動を発生させ、蛇紋岩を模したシリカビーズとゲルとの間に摩擦を生じさせた。遺伝子を吸着したクリソタイルは滑り摩擦力が推進力となり細菌細胞に突き刺さることがわかった。その結果細菌は遺伝子を高頻度で細胞内に取込み、形質が大きく変化した。地震や隕石の衝突、火山性微動、潮汐などから生じる震動は細菌進化を押し進めている可能性がある。                     研究成果は米国の科学雑誌アストロバイオロジー(2009年4月号)に掲載された。                                                                                                                                                                                                                                                     2 May 2009 Magazine issue 2706