ヨシダ効果の発見とその原理応用 〜ハイドロゲル上で細胞と滑り摩擦の偶然の出会い〜


  細菌細胞と微細針状物質をハイドロゲルの摩擦場に置くと、微細針状物質と細菌細胞は衝突し、穿刺中間体(ペネトロン)と呼ばれる複合体が形成されます。この物理現象はヨシダ効果と呼ばれています(下図)。ペネトロンのおもしろい性質として、微細針状物質に遺伝子をまぶした状態でペネトロンを形成させる と、ペネトロン内部では遺伝子の授受が行われます。ペネトロンは中間体ですので、娘細胞を放出すれば、細菌の外来遺伝子による形質転換が成立します。ペネ トロンの性質を利用して、細菌への遺伝子導入技術、遺伝子発現抑制技術、アスベスト検知技術の開発を行っています。ヨシダ効果の基礎探求としては、物理的知見をさらに深め、自然界での意義を見出そうとしています。

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プラスミド不和合性の破れを利用したペネトロンの構造予想

ペネトロンを細菌の遺伝子発現抑制技術に応用する

 

 

 

 

好熱性細菌の触媒作用による結晶形成とパンスペルミア説


  堆肥中から60℃に最適生育温度を示す好熱性細菌Geobacillus thermoglucosidasius NY05が単離されました。単離細菌は酢酸塩とカルシウムを含む水溶液中あるいはゲル中、60℃において細胞外に六方晶形やダンベル形結晶の形成を触媒することを見いだしました。X線回折の結果、結晶はマグネシウムーカルサイトであることがわかりました。結晶の長径は100μm程度で強力な蛍光特性を有しています。蛍光顕微鏡観察 では励起波長を365+/-5、480+/-20、545+/-5nmとするとそれぞれ青、緑、赤色蛍光が観察されます。本研究は結晶の蛍光特性を詳し く解析比較し、産業への利用を確立させることが目的です。また単離細菌がどのように結晶を形成するのか、そしてなぜ結晶を形成するのかその意義を地球化学的に明らかにしようとしています。

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ストロンチアナイトに石化するGeobacillus thermoglucosidasius NY05

G. thermoglucosidasiusの触媒作用によって形成されるマグネシウムーカルサイト結晶の光学顕微鏡写真

励起波長 460-500 nm、       放出波長 510-560 nm

 G. thermoglucosidasiusの触媒作用によって形成されるマグネシウムーカルサイト結晶の蛍光顕微鏡写真  励起波長 360-370 nm、放出波長>399 nm

励起波長 540-550 nm、      放出波長 573-648 nm

 

 

 

Zymomonas mobilisのアルコール発酵能と新規蒸留酒製造の可能性


  飲料用アルコールは、各地で生産される穀類のデンプンや果実の果汁を原料にし、酵母のアルコール発酵能を利用して製造されます。中米では竜舌蘭という特有の原料を用いてアルコール飲料が製造されています。興味深いのは酵母ではなくザイモモナスという細菌がアルコールを生成していることがわかり、世界でも唯一の例ではないかと考えられています。特にメキシコの一地方で生産される酒類はテキーラの総称で知られています。近年、竜舌蘭を原料に生産される酒類はザイモモナスのアルコール発酵能を利用しているとはいえ、酵母も混在した状態でアルコール発酵が進むと考えられるようになりました。したがって純粋に細菌のみのアルコール発酵で製造される酒類は世界にはないといえます。ザイモモナスのみの発酵によって作られる酒類の製造は新しいコンセプトを与え、従来にない蒸留酒を提供できる可能性があります。ザイモモナスのアルコール発酵に関しては太田らの以前の報告があり (Ohta et al. Environmental effects on ethanol tolerance of Zymomonas mobilis. J Ferment Technol, 59, 453-439, 1981)、これらの結果を基に基礎的なアルコール発酵評価を行っています。

 

 

細菌の酸刺激惹起による外来遺伝物質の引込みと吐出し


  弱い酸に浸すだけで、ある種の細菌はDNA分子を性急的に細胞内に引込んだり吐出したりする現象が偶然に見つかりました。この説明のつかない現象について様々な角度から検証しています。